死ぬまで離さない

たくさんの夏を見てきた。
これだけ月日が立てば街並みも変わり、ほんの数日しか過ごしていないあの頃の風景をもう思い出せない。
私の魂はずっとひとところにとどまっている。

君のために命を散らしたこと、私は何も後悔していない。
君は私の命を救った。
あのとき私のからだは、心は、命は、君のものになった。
君を守り、君のパートナーを守り、君の望みを守れたことを誇りに思っている。
何も後悔はしていない。

だけど、次に君に会ったとき、私は、君に触れることさえできなかった。
すり抜けた、震えた手。
はっきりわかってしまった。
もう私は、君を守る存在になれないことを。

君のために生きていくと誓った。
だから君のために死ぬ。
当たり前だと思っていた。
喜びでさえあった。

だけど、君に触れられない。
肩を落としている君を抱きしめることもできない。
そんなことにも気付けなかった。
君の幸せだけを考えていたはずなのに、君を泣かせてしまった。
この手から零れ落ちていくものは、涙だけではなかった。

君のためだと思ってしたことは、私のエゴだったのか。
抗って、這いずって、君の隣にいればよかったのか。
君はどうしてほしかった?テイルモン。
お願いだから、そんなに泣かないでおくれ。
長い長い年月の中で、私は新しい望みを見つけたよ。

もしももう一度、君と巡り合って、触れ合える日がくるとしたら。
今度は君を死ぬまで離さない。

2015/8/3
テイルモンに愛を込めて

Posted by 小金井サクラ