白い羽根休めるようにヤドリギの下で待つからどうぞキスして

クリームシチューにサラダ、バゲットとローストチキンが食卓を彩る。
グラタンにしようか迷ったんだけど、なんて僕の天使は歌っている。
フルートグラスが触れ合って、グロッケンみたいな音がリビングに響いた。
「ヒカリちゃんのローストチキン、おいしいんだよね」
「あら、ありがと」
「ほんとだよ。一年に一回じゃなくて、毎日でも食べたいくらい」
「毎日丸鶏たべるの?タケルくん太っちゃうわよ」
ふふふと笑う彼女の小さなおくちに、黄金色のモスカート・ダスティが注がれる。
微発砲のワインは口のなかではじけ、甘さと清涼感にこころときめく。
お皿がきれいになるのに反比例しておなかはじゅうぶん満たされたはずなのに、それでもデザートは別腹だ。
4号のチョコレートケーキをぽいぽいたいらげ、君は恍惚としている。
テーブルの上がチーズとクラッカーとワインだけになったちょうどいい頃合いに、いざ。
「ヒカリちゃん、メリークリスマス」
目の前にあらわれた真っ白い包みに、アマリリスのように可憐な瞳が大きくなった。
かわいいなあ、もう。
「わあ、ありがとう。開けてもいい?」
「もちろん」
彼女は丁寧に包みをほどく。飾りのフェザーがふわふわと揺れる。
「きれい…」
それはヤドリギをかたどった繊細な金細工の髪飾りで、実を模した小さなパールがあしらわれている。
ひとめ見て、ぴんときた。これしかないって。
「ヤドリギはね、幸福をもたらすと言われているんだって」
「ありがとう。つけてみていい?」
「僕がつけてあげる」
絹糸のような髪。触れるだけでどきどきする。
思った通り、亜麻色の髪に金とパールがよくなじんで、とてもきれいだ。
「似合うよ」
「えへへ、うれしいなあ」
清らかで、愛らしくて、無邪気で、妖艶で。
バラ色の頬で微笑む君は、聖なる夜に舞い降りた僕の天使。
「You are under the mistletoe.」
「え?」
「ヤドリギの下にいる女の子には、キスしてもいいって知ってた?」
天使の吐息は芳醇なモスカートの香りがした。

#タケヒカ版深夜の真剣お絵かき文字書き60分一本勝負
2015/12/25 お題自由

Posted by 小金井サクラ