先にキスしたほうが負け 端っこで食べずにずっと待っててもいい? 

ちょっと飲み物を取りに行ってる間に、私のおやつが姿を消した。
「お兄ちゃん、ヒカリのポッキー食べたでしょ」
ぎょっとした顔でこっちを見たお兄ちゃんの手には、最後の一本。
「いや、なかなか帰ってこないから、つい手が勝手に」
チョコレートのお菓子にはミルクティがいいんだもん。
牛乳を沸かしてたからちょっと時間かかったけど、それでも10分くらいのはずなのに、なんで一箱ぜんぶ食べちゃうのよ。
しかも大人のミルクだよ。ちょっとお高いやつなのよ。
「お兄ちゃんの、ばか」
「まあまあ、最後の一本やるから、そんな怒るなよ」
へらへら笑いながら、チョコレートの先端を差し出してくる。
まったくもう、食べ物の恨みは恐ろしいんだからね。
お兄ちゃんの手を両手で握って、チョコレートのかかったプレッツェルを口に含む。
ココア色の瞳が斜め後ろを確認している。
お父さんもお母さんも、部屋に戻ったわ。
お兄ちゃんは観念したようにひとつ息をついて、私の頬に手をかける。
チョコのついてない方を口にふくんだお兄ちゃんは、そのままサクサクっと食べ進めて、私のくちびるをかすめていった。
一瞬で、あまりにさりげなくて、呆けた私の口からプレッツェルのかけらがこぼれる。
「リビングでは、これ以上だめだぞ」
やわらかくにぎられたままの手が、お兄ちゃんの部屋にひっぱられていく。

せっかくつくったミルクティは飲まないまま冷めてしまった。

#八神兄妹版深夜の真剣お絵描き文字書き60分一本勝負
2015/11/13「ポッキー&プリッツの日」

Posted by 小金井サクラ